「いや、ちょ、ちょ待てって！」
「いや待たない」
「あぁーー！！止めろってー！」
「………何してんの？」
不法侵入としか思えない位の方法で遊太と笑太が俺の部屋に来たと思えば途端にこれだ。
兄弟だけで騒いで俺だけ仲間外れな勢いのこの騒ぎには、いつまでたっても馴れない。何、わざわざ俺をハブりたくて此所に来てるってか？
「なら来るなよ」
「何のハナシだ？」
仲間外れのハナシ。
ってか最初にそれ訊いたの俺なんだけど、スルーかよおい。
「何しに来たんだよ？」
もう一回、同じことを訊いたら遊太がきょとん、とした顔で答えた。
「クロの部屋に入るのに理由はいるのか？」
「あるよ。大アリだよ。プライベートの侵害だよ」
「クロのくせに生意気だな。拘束すっぞ」
「シシシっ！クロに人権なんて無いんだもんな！」
「ふざけんな」
「じゃあ真面目に切り刻んでいい？」
「ごめんなさい」
背後に遊太以外の何かを背負っている笑太には逆らえない気がする。
多分笑太は遊太以外に悪魔を飼ってると思う。サタン級の。
「冗談置いといて、これ見てみろよ、クロ」
冗談に聞こえなかった冗談を冗談に流した笑太は、さっき乱闘しながら遊太から取り上げてた２枚の紙っぺらを俺に差し出した。
「……テスト問題？」
「こないだ漢字の小テストがあってさ。それ、遊太のなんだけど」
「……壊滅的だな」
テスト用紙を受け取ってまじまじと見る。点数なんて口には出せない程、これは酷い。
「なんか休み時間ぶっ通しで寝て、起きたらなんか皆テストやってんのな！
残り３分でその点数は上等だろ！」
「遊太のことだから残り時間が３分だろうが３０分だろうが差して変わらないと思うけど」
「ひっで！」
遊太だろうが容赦無しに毒を吐く笑太。
遊太は免疫付いてるから結構軽く流してるけど、免疫が付いてないヤツからすれば喧嘩事になると思った。
「ここみて」
そんないかにも有り得そうな出来事を考えていたら、笑太はテスト用紙のある問題を指差した。
「『次の漢字を読みをふりがなにして答えろ。――――"凹凸"』
………"おうとつ"？だっけ」
「そ。それが正解。だけどさ、遊太の答えさ、見てみ」
テスト用紙のもう１枚から、遊太の解答用紙から"凹凸"の答えを指差す笑太。
「…………"テトリス"」
うわぁ。遂に生で見ちゃった珍解答。
どっかの本か何かでネタとして出てそうだよこの勢い。
「…素晴らしい解答だな」
ある意味で。
「…だぁーってよ！眠かったんだって！」
「眠くて凹凸がテトリスって読めたお前の脳に尊敬するよマジで」
まぁ自分はそんな脳になんかなりたくないけど。
「だって眠いし、３分だし、焦るじゃん！？」
「だから"テトリス"ってなんだよ笑太。凹凸くっつけて消せってか？あ？」
「やれるもんならやってみろ」
「ごめんなさい」
こ、こぇぇよ笑太！
なんで急にサタン降臨したんだよ今。そんなにスイッチプッシュしてた俺？
「あーもー、マジなんで先生起こしてくれなかったんだよー……死ねっ！」
「いや……
むしろお前が死ねよ」
「ひっで！」
「…………」
笑太、って誰の味方なんだろうか。
「自分の味方」
「最後の最後で心読まないで笑太」
01.むしろお前が死ねよ
(あ、俺死にたくないからクロ死ねよ？)
(最終的にそうゆうオチか)
配布元→空想アリア
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